介助犬ユーザーからのメッセージ
介助犬に関心がある方に
目次
モアナとの介助犬訓練で、生きる楽しさを再確認
介助犬モアナユーザー 新倉邦子
私は10年くらい前より病気を患い、徐々に歩けなくなりました。以前は、自分で運転しあちこちに行き、日々の生活を楽しんでいましたが、それ以降、主人の休日以外の外出はできなくなりました。誰とも接点がなくなり、段々と精神的にもおかしくなりました。人と話すことも、車椅子に乗ることも嫌で外に行けなくなりました。以前はゴールデンレトリバーを飼っていたので、家族は私が「犬を飼えば癒され、世話をし、話しかければ元気が出てくるのではないか?」と、ゴールデン・ドゥードル(ゴールデンとスタンダードプードルの計画的なミックス)のブリーダーYさんからモアナを迎えました。モアナの子犬時代はやんちゃで、前の子と違って大変でしたが、生活が一変しました。ところが、去年の初めにさらに大病を患い、ショックによるストレスで歩行困難が進みました。
そんなときYさんから日本聴導犬協会の有馬会長を紹介されました。連絡を取ると協会スタッフが我が家にきて相談と同時に、私とモアナの面接。協会からも当初は、自宅内だけでのお手伝いでもと、まずは社会化と介助お手伝い訓練が開始されました。協会の訓練は特殊で、ストラップを使う、犬にわかりやすく楽しい方法です。毎日の繰り返しでみるみるうちにモアナは、朝は洗濯物を洗濯機に運び、風で飛ばされた物を拾う。電話がなると子機を手元まで届け、リモコンやひざ掛け・携帯などあらゆるものを持ってきてくれます。日々の暮らしが楽になりました。モアナが一緒ならば、元気が出てどこへでも行けるようになりました。協会(長野)での滞在訓練中に、理学療法士や作業療法士の方の助言を受けました。バス・電車・スーパー・レストランへの同伴訓練と、高度な訓練がスタート。回数を重ねるたびに、最初は乗車訓練中に落ち着けなかったモアナも安心して同伴できるようになりました。一番苦労したのは室内トイレです。今ではどこの多目的トイレでもシートで排泄できます。これで安心して同伴できます。
私自身も訓練で協会スタッフやボランティアさんとの会話が増え、外でもたくさんの方に話しかけられて段々と人と話す元気がでてきました。生きている楽しさも感じられるようになりました。
これも協会との出会いがなければ、今の私はなかったでしょう。介助犬訓練に、家族が大きなサポートをしてくれたおかげで、協会と出会って1年目で介助犬認定試験です。有馬さんの助言で、私の緊張がモアナに感じ取られないために「訓練の延長」と繰り返し受験しました。試験とは知らないモアナもいつも通りに頑張りました。訓練当初はビビっていた乗車も、ウトウトとうたた寝するモアナを見てその成長ぶりに涙が出ました。そして無事に合格。はれて介助犬モアナの誕生です。これからも訓練を継続し、モアナの修得した能力をユーザーとして維持していきます。最後になりますが、有馬会長をはじめ日本聴導犬協会の方々に、本当にお世話になり感謝しております。今後は介助犬についてより多くの人々に理解していただけるよう、できる限りお手伝いさせていただきたいです。(※日本聴導犬協会では2002年から聴覚と肢体障がいのある方のために介助犬訓練を実施。聴導犬の候補はほとんどが保護犬を活用ていしますが、介助犬の場合はユーザーの負担を考え、介助犬そんやモアナのような毛の抜けにくい犬種を選んで介助犬に育ててゆきます)
(「(福)日本聴導犬協会」 30号より)